この記事では、キハ66という表記に統一させて頂きます。
今年3月14日のダイヤ改正でJR九州に新たな車両が加わりました。
長崎~佐世保間にYC1系がデビューしたのです。JR九州としては初めて蓄電池を搭載したハイブリッド車両で、キハ66と比較すると燃料消費量がおよそ20%低減される省エネ車両です。
前面のデザインを見ると昨年にデビューした821系の気動車版という印象を受けますね。
ちなみに形式名の「YC」は開発コンセプトの「やさしくて(Y)」と「ちからもち(C)」のローマ字の頭文字を組み合わせたものになっています。
YC1系は平成30年に量産先行車がデビュー。今年2月には量産車3編成6両が甲種輸送され、3月から運用が開始されました。先日も3編成6両が増備され、順次キハ66の置き換えが行われていくことになります。
3月のダイヤ改正直後にも運用を離脱したユニットが出ました。
▲長崎駅に貼られていたYC1系を宣伝する広告。「スマートドア」と呼ばれるドアボタンによるドアの開閉が行えることが特徴です。
キハ66は昭和50年の山陽新幹線の博多開業に合わせて、北九州・筑豊地区の輸送を改善することを目的に導入されました。
設計面はキハ58を踏襲していましたが、気動車としては初めて転換クロスシートを採用しました。普通・快速のみならず、急行列車としての運用も想定したそうです。のちの185系に通ずるものを感じますね。
エンジンはキハ181やキハ65で採用されたDML30HSDをパワーダウンしたDML30HSHを採用しています。
キハ66とキハ67の2両でユニットを組んでいるのが特徴で、15ユニット30両が直方気動車区に配属されました。キハ66にトイレ、キハ67に冷房用の発電機を搭載してキハ66に給電を行っています。どちらも片運転台の車両なので、原則ユニット同士を組み合わせて運用に就いています。
▲長崎駅に停車するキハ66。デビュー時はこの急行色をまとっていました。
現在はトップナンバーである第1ユニットの編成と、台車の交換が行われた100番台のユニットの計2本がこの塗装で走っています。
デビュー当初は筑豊本線や篠栗線での運用の他、関門トンネルを経由して下関まで乗り入れたり、キハ58と併結して筑豊本線の急行「日田」に使用されることもありました。「日田」は直方から筑豊本線と鹿児島本線を経由して小倉に出て、日田彦山線と久大本線を経由して由布院まで行く複雑な経路の列車でした。
昭和55年のダイヤ改正で急行運用は無くなりましたが、筑豊エリアのローカル列車として活躍を続けてきました。
▲早岐駅を出発するキハ66。個人的にはこのデビュー当時の塗装と、シーサイドライナーの塗装の混結は結構好きです。
JR化後も筑豊での運用を続けていたキハ66。デビュー時に換装していたエンジンのDML30HSHが老朽化したため、JR東日本のキハ110などに使われているDMF13に取り替えられました。塗装もキハ40系列やキハ58と同じように、白地に青帯の物へと塗り替えられました。
▲田川後藤寺駅に停車するキハ147。JR九州のローカル運用で活躍する国鉄型気動車はこの塗装をまとっていましたが、今はキハ40・140だけになりましたね。後は415系の鋼製車もこの塗装で活躍していますね。
平成13年、筑豊一筋で頑張って来たキハ66に転機が訪れます。
筑豊本線と福北ゆたか線の電化開業により、全車が故郷である直方から長崎に転属したのです。そういえばこの時のダイヤ改正では、DD51が牽引する50系と12系客車による普通列車も姿を消しましたね。
筑豊から長崎・佐世保に活躍の舞台を移したキハ66は、白帯と青帯のJR九州の標準色からキハ200と同じシーサイドライナーカラーに変更されました。
なお平成12年に国鉄急行色に復刻された第1ユニットの編成は、そのままの塗装で長崎でも運用されることになりました。
▲諫早駅に停車するキハ66。キハ58のシーサイドライナー塗装は紺色でしたが、キハ66はキハ200と同じ青色のシーサイドライナー塗装をまとっています。
▲シーサイドライナーとして活躍するキハ66とキハ200。どちらの形式でも2両編成の場合はワンマンで運転されています。
▲長崎駅の側線に停車するキハ66。そういえば長崎駅の高架化によって、地上ホームの側線に停車する光景も過去のものになったんですね。
しばらくは大きな動向が無かったキハ66にも、平成27年に初めて運用を離脱するユニットが出てきました。この編成は翌年には廃車となり、それまで40年以上廃車の無かったキハ66としては初めての廃車となりました。
そして今年のダイヤ改正でYC1系が導入されることにより、運用を離脱するユニットが出てきました。
ダイヤ改正直後に4編成が離脱し、中にはラストナンバーの15番ユニットや中の人がお世話になった9番ユニットも含まれていました。
先日YC1系の甲種輸送が行われたので、今年度中に運用を離脱するユニットがまた出てくることも予想されます。キハ66は全てYC1系に置き換えられる計画なので、今のうちの記録をおススメしたいですね。
夏休みには爽やかな青色をまとって長崎の海沿いを走るキハ66に乗りにいかれてはいかがでしょうか?
ちなみにJR九州の他の線区にもYC1系が導入される予定なので、今後はYC1系によってキハ40やキハ140の置き換えも行われるかもしれないですね。
▲長崎駅に並んで停車するキハ66。ちょうど高架化工事が完了する直前だったので、後ろには高架線が見えます。キハ66が並んで停車するシーンも段々と見られなくなりそうですね。
キハ66はそれまで全国に一律で同じ規格の車両を導入していた国鉄の設計思想から脱却し、地域ごとに合った設計の車両を導入する先駆けになったとも言えます。
もしかするとJR九州で個性的な列車が走っているのも、元をたどればキハ66という先駆者がいたおかげかもしれませんね。
中の人も好きな車両なので、最後の日まで大村線の海沿いを元気に走り続けて欲しいと思います。
▲地上駅のホームから見た高架の長崎駅。中の人が訪問した時は2月の半ばだったので、あと1か月ちょっとで開業するという時期でした。
それでは今回はこの辺で記事を締めたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。